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実績・コラム

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世界一高額の洋服ブラシの職人さん

2018.06.10

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コトノハの佐藤美のです。

 

 

世界一高額な洋服ブラシっていくらだと思いますか?

調べたところ、確か16万円ほど。

それは特殊な繊維に使うようですので

一般的な洋服全般に使えるのでは12万円ほどでした。

 

 

洋服より高い。。。ですよ(笑)。

 

 

じつは私、その世界最高峰の洋服ブラシの職人さんに

プライベート取材をしたことがあります^^

 

 

プライベートですから

どこにも取材内容を公表するわけでもなく

記事を依頼されて書く必要があったわけでもなく

ただ、お会いしてお話を聞いてみたかったんですね。

 

 

そんなゼロが一つも二つも多いような

高値の洋服ブラシをつくる職人って

一体、何を考えているんだろう?って

思ったんです。

 

 

ちなみに、その方の洋服ブラシは

世界トップランクのブランドのデザイナーや

日本のトップクラスのデザイナー

有名なコーディネーターなど

錚々たる一流の専門家が愛用されています。

 

 

なんでも、宣伝もしなくても

口コミで広がり

海外トップブランドからタイアップの申し出もあったそうで

わざわざ代表の方がその方に会いに来日されたこともあったとか。

 

 

熱烈なメールを何度も送り

自分の熱意を伝えました。

 

 

そうしたら、

最終的に快諾のお返事をいただきました。

そこで、すぐにスケジュールを抑え

工房まで足を運びました。

 

 

いま振り返ると

我ながら変なことをしたな、と思いますが

その頃から培われたのかもしれません。

知らない人にコンタクトをとって

取材のご依頼をすることを(苦笑)。

 

 

工房はところせましと

工具と作りかけのブラシが並んでいました。

濃いめのコーヒーを出してくださり

「で、あんた何が聞きたいの?」

と言われるかと思いきや

最初から最後まで、その方の人生論と

世界観、世論を切るような思想を弾丸のように

お話してくださいました。

 

 

正直なところ、取材の展開も何も考えていなかったので

それはそれでありがたく、

その方を知りたいという希望通りの進行になりました。

 

 

話がブラシだけでなく多彩なので

「こんな濃いお話をお聞きできるとは思っていませんでした」

と申し上げたところ

「あんた、俺の話を聴きにきたんだろ?

ならこれでいいんだよ」

となんとも豪快なお言葉。

 

 

もうかれこれ3年半ほど前になるのかな。

今でも心に残っていることは二つ。

 

 

「マーケティングなんて糞食らえ。

マーケティングにあわせてたら、作りたいものが作れねぇ。

現代の洋服ブラシとはどんな機能が必要なのか

それを考えてひとつひとつの工程を踏んでいるんだ。

その結果、今の金額になっただけ」

 

 

と、なんとも痛快なお言葉。

60歳を過ぎた時に

「もういい加減なブラシを作るのは嫌だ」

という想いになり、現在のブラシを試行錯誤して開発したそうです。

 

 

現在は、二代目が後を手伝っていらっしゃいますので

その方の技術はしっかり継承されています。

「技術をさっさと身につけてもらわなくちゃ割にあわねぇ。

背中を見て盗めは、時代遅れよ」

とかおっしゃっていました^^

 

 

もうひとつ、印象に残っているのは

私について言及されたこと。

「あんた、人の話を聞いて書くんだろ?

だったら、ものごとの本質をつかめる人間にならなくちゃな。

あんたの仕事はそういう仕事だろ?」

 

 

はい、とお答えしたところ

「じゃあ、精進しなさいね」

と。

 

 

終始ぶっきらぼうに話される姿は

「The 職人」

というような印象。

 

 

大学を卒業後、数奇屋建築の現場で

仕事をしていたこともあるので

職人さんは好きです^^

新入社員のころは職人さんに可愛がっていただいたこともあり

ものづくりをする人に対して好意的でもあります。

 

 

味のある職人さんだなぁ

と思っていました。

 

 

2時間ほどご一緒し、さて帰ろうとなった時

玄関までお見送りしてくださいました。

「ありがとうございました」

と私が申し上げ

ドアから出て振り返りドアを閉めようとしたら。。。

 

 

深々とお辞儀をされていました。

 

 

私は驚きました。

お客さまでも、広告宣伝をする業者でもない。

ましてや取引先でもない。

 

 

なんの利害関係もない相手に

仕事の手を2時間も休めてくださりお話くださったのです。

こちらがお礼を言うのは当たり前ですが

その方は、深々とお辞儀をされていました。

 

 

そのお辞儀が

「単なる礼儀」や「形だから」ということでなく

心からされていることが伝わってきました。

 

 

意表を突かれ、お心が伝わってきた感動で

一瞬体が止まりました。

そして、私も最敬礼をしました。

 

 

私はその方から、

「職業の貴賎、人の外側に惑わされず

相手の本質をきちんと見る目を持ちなさい」

と態度で言われた気がしました。

 

 

その後、私はその洋服ブラシを買い求めました。

雑な人間なので(苦笑)、

冬以外、使う頻度は少ないのですが

そのブラシを見るたびに作り手の心意気を思い出します。

 

 

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