実績・コラム
貴金属の絵画・エングレービング
- #コラム
「エングレービング」をご存知ですか?
貴金属に優美で精緻な彫りをほどこす技術のことだそうです。
「和彫り」に対し「洋彫り」とも言われています。
恵比寿に本店があるジュエリーショップ「PARCELLE」さん。
http://www.parcelle.jp/estore/
今月いっぱい、新宿の高島屋に出店されています。
出店先でエングレービングの職人さんが実演されている、と教えていただいたので、本日、見学に行ってきました。
「PARCELLE」さんから、エングレービングのお話を聴いてはいました。
でも、実際拝見するのは初めて♪
わくわく、ドキドキです。
発祥がヨーロッパのエングレービング。
「日本の粋」や「潔い美しさ」を感じさせる和彫りとは趣が異なり、ヨーロッパの歴史と雰囲気を纏っているような、柔らかで曲線的な印象です。
アラベスク模様や、装飾されたアルファベット、薔薇や花など、直線からなめらかなカーブまで自在に彫ることができます。
こちらは、メンズリング
貴金属になら、ほぼ何でも彫れるそうで
リング、ネックレスのトップ、ブレスレット、お誕生日や結婚式などのアニバーサリープレート、時計の裏側(名前忘れました)、そして銀製のボールペンなどにも装飾できます。
ひとつひとつの作品を見せていただきました。
わずか数ミリから数センチのミクロの世界に展開される芸術。
何か物語を感じさせるようで心打たれました。
ただただ、うっとり。。。
職人の方の「貴金属の絵画です」という言葉、とてもうなずけます。
こちらは、天然の真珠とリング部分にエングレービングされた指輪。女性用
拝見しているうちに「自分用に欲しい!」とも思ったのですが、不思議なことに「大切な人に贈りたい」という気持ちの方が強く感じるのです。
こんなに素敵なものを独り占めするより、誰かにプレゼントして喜んでもらいたい、言葉に載せられない想いを伝えてくれるんじゃないか、そういう気持ちにさせてくれます。
自分の娘には、リングやネックレストップ。
恋人やパートナーへは、ボールペンやペアリングなどなど。
本当に不思議。
自分よりも大切な誰かに。
きっと、実際の仕事を拝見しお話を聴いたので、私の中でエングレービングの世界が誕生したからなんでしょうね。
大切にしたい技術
残したい伝統
こめられた技術と想い
生き続ける美しさ
愛おしさ
そういったものが心に生まれ、それを手渡して喜んでもらいたい。
「知る」ということは本当に素敵なことです。
職人の方には、この世界に入ったきっかけ、どこに魅力を感じているのか、お仕事の喜びや嬉しさ、難しさ、などなどたくさんお話ししていただきました。
この方のように
こうやって彫ることが好きで、
そのための努力を何ともおもわずできてしまい、
お客様が喜ぶことを嬉しく思い、
ものづくりの現場で生きていきたい、
といった情熱は「作品に自然と乗るんだなぁ。。だから手にした時感動するんだなぁ」と感じました。
「矢」が彫られているの、見えるでしょうか……
大切にしたいもの・次の世代にも伝えたいと思うもの・慈しみながら身に纏いたいものとは、作り手の心意気と手にした人の愛情のかけ方で、美しさも価値も、育っていくような気がしました。
それを「本物」というのでしょうか。。。
「本物」という言葉の定義をいつも難しいなぁ、と思っています。
その定義はひとまず置いておいて、「丁寧に扱いたい」と思わせるものには、物質だけの価値ではない、目に見えない価値と暖かさがあると感じます。
私はそういうことを「大切」と考えています。
矢の先端を彫っています
実は、彫り風景は意外でした。
拝見するまでのイメージは、片目に拡大鏡などをくっつけて猫背で作業している姿。
ところが実際は、背筋を伸ばし、姿勢正しく顕微鏡をのぞきながら、彫りを施していくのです。
予想外の作業風景は驚き!!
現在は、顕微鏡を使うことが主流のようで、肩・背中・目の負担が軽減されるそうです。
また、「視野が広がる」ことも利点だとか。
技術の進歩がこうしたことに使われるのは、なんだか嬉しいですね。
お話の最後に
「喜んで彫っていらっしゃるからこそ、作品に暖かさと良さがでるんですね」
という私の投げかけに
「ああ、そう思っていただけたら嬉しいですね。価値を感じていただけたら嬉しいですし、そう思っていただけるように精進したいです」
という言葉が返ってきました。
PHOTO BY TAISUKE NARISAWA
上部にぼやけて見えるのが、顕微鏡。ここから覗いて細い作業をしていきます